2024年6月11日(火)~ 2024年6月25日(火) Web配信
廣瀬 眞理子(関西学院大学文学部心理科学実践センター 地域貢献部門プロジェクトコーディネーター)
今回行われた関西学院大学心理科学実践センター公開講座では、関西学院大学文学部心理科学実践センター地域貢献部門プロジェクトコーディネーターで公認心理師、精神保健福祉士の資格をお持ちの廣瀬眞理子先生に「発達障害のある若者と家族をつなぐ行動支援、自治体と大学のコラボレーション」についてお話いただきました。廣瀬先生は、青年期以降の発達障害のある若者の家族のために、応用行動分析に基づく支援プログラムの開発、実施、並びに支援事業に従事しておられます。10年以上にわたり神戸市の青年期発達障害支援事業に精力的に取り組まれています。
講座の前半では、若者を取り巻く現状とひきこもりの長期化問題について、神戸市青年期発達障害支援事業における取り組みをご説明いただきました。
「神戸市青年期発達障害者支援事業」は学業から就労への移行期である青年期の人たちへの支援が行き届いていないことや青年期以降に初めて発達障害の診断を受けた事例が増加している現状を受けて家族の支援ニーズに応えるために誕生しました。本事業は、2013年、神戸市発達障害者支援センターと市内4ヶ所にある発達障害相談窓口、関西学院大学との三者連携により開始し、2023年からは神戸ひきこもり支援室(2020年開設)も加わった共同の取り組みであることをご紹介いただきました。さらに支援事業の概略についてご説明いただきました。
講座の後半では、現場やご家族の声、支援につながるまでの経緯を示しながら、実際の支援事業の具体的な内容についてご紹介いただきました。
支援事業は、肯定的な注目などポジティブな家族間コミュニケーションに焦点を当て問題解決を目指す実践参加型のワークショップを実施するため、応用行動分析のABC分析を活用したワークシートを使用してグループワークなどを行う家族支援プログラムと、応用行動分析を用いた事例検討やコンサルテーションが行われる支援者支援研修プログラムが行われていることを学びました。行動支援の7つのステップについてもご説明いただき、ひきこもりの方がいらっしゃるご家族の「自分にできることを知りたい」というニーズにも応える具体的な支援について理解を深めることができました。
講座の終盤には、地域の要請を受けて、大学が自治体の関係機関との連携により共同プロジェクトを進めるうえでの課題や注意点、さらに地域貢献の拠点としての心理科学実践センターの今後の役割について、先生方によるディスカッションが行われました。
以上、今回の講座を通して、実効性のある手法を用いて、それを要支援者が自分自身で実践できるように支援すること、地域の支援者と連携し支援を必要とするご家族に寄り添った形で支援を行うことの大切さを学ぶことができました。
(文責:関西学院大学大学院文学研究科博士課程前期課程 池川梨花)