公開講座『児童思春期の不安と心のケア』(2022.3)

開催日時・場所

2022年3月7日(土)~ 2022年3月21日  Web配信

講師

佐藤 寛(関西学院大学文学部・教授)

概要

今回行われた関西学院大学心理科学実践センター公開講座では,当センター副長の関西学院大学 文学部 佐藤 寛教授が, 「児童思春期の不安と心のケア」についてお話しされました。佐藤教授は,臨床児童青年心理学,認知行動療法を専門にしており,現在は「子どもの不安改善プログラム」に取り組んでいます。

講座の前半では,子どもの不安の特徴や,不安症の種類についての説明がありました。子どもは,大人よりも経験が少ない分,様々なことに対して不安を感じやすい一方で,①子どもが不安になるのは当たり前だから,別に問題ではない,②不安は成長すれば治るから,放っておいていい,という2つの誤解が生じやすいことが紹介されました。また,子どもの不安症となると,①行動面より感情面の症状が主である,②感情面のトラブルを大人に言いたがらない,③学級等ではたいてい不安症の子よりも,目立つ行動/学習面の問題を抱える子がいる,という特徴から,気づかれにくいという特徴があることが語られました。そして,子どもの不安症には,分離不安症,全般不安症,パニック症,広場恐怖症,社交不安症,場面緘黙,限局性恐怖症など様々な種類があり,具体的な例や絵本,書籍,発症年齢に関するデータを基に解説がなされました。さらに,子どもの不安症は,①約6.5%の子どもが不安症の疑いがある,②見過ごされやすい,③将来うつ病などになりやすい,④他の症状と合併しやすい,という特徴があり,早期発見が重要であることが示されました。

講義の後半は,子どもの不安のための心のケアについて周囲の大人ができること,専門的な支援という観点から解説がなされました。周囲の大人ができることについては,①気づく,②見守る,③話を聴く,④専門家を頼る,という4つの方法を適宜用いることの必要性が示されました。専門的支援については,薬物療法や心理療法が用いられ,子どもの不安症に効果があることを示したデータを用いながら説明がなされました。心理療法は,考え方(認知)とふるまい方(行動)に注目する認知行動療法が第一選択肢となり,不安の「原因」だけではなく「解決の方法」を重視し,新たな考え方・ふるまい方を身に着けて自分自身で問題に対処する方法を学ぶことが解説されました。

さらに,認知行動療法について,「子どもの不安改善プログラム」で実際に使用している内容を用いての説明がなされました。「子どもの不安改善プログラム」では,認知行動療法を子どもにもわかりやすく,取り組みやすいように作成しており,不安について学びながら,段階的に新しい考え方・ふるまい方を身に着けていけるよう構成されていました。また,子どもがプログラムに参加しやすくなるような工夫も紹介されました。

公開講座では,不安症の種類,子どもの不安症の特徴,子どもの不安症への対応,認知行動療法について全般的に紹介されました。特に,認知行動療法は,表現方法を工夫することにより,子どもにも適用できることを知ることができたため,対象者に合わせて工夫していくことの大切さに気づく機会が得られました。

(文責:関西学院大学大学院文学研究科博士課程前期課程 神田 満)