公開講座『コロナ禍におけるマインドフルネス』(2021.2.21)

開催日時・場所

2021年2月21日(土)14:00~16:00  Webセミナー(Zoom)

講師

池埜 聡(関西学院大学人間福祉学部・教授)

概要

今回行われた関西学院大学心理科学実践センター・関西心理学会共催公開講座では,関西学院大学 人間福祉科学部 池埜 聡先生をお招きし, コロナ禍におけるマインドフルネスについてご講義をいただきました。池埜先生はマインドフルネス,心的外傷,臨床ソーシャルワークをご専門とされており,これまでにトラウマ被害に対する支援や東南アジア難民支援などにも精力的に取り組まれています。

講座の前半はこれまでのマインドフルネスの研究成果について,瞑想の実践を挟みながら説明していただきました。マインドフルネスは2012年にJon Kabat-Zinn先生が来日をしたことをきっかけに注目を集め企業を中心にムーブメントが生まれたことや,マインドフルネスに関する論文数が近年増加傾向にあることを,データを用いて示してくださいました。マインドフルネスのストレス低減のメカニズムとしては,今この瞬間に注意を向けること,そして注意がそれてもあるがままに受け止めるという2つの要素が有効であるというモニターアクセプタンス理論をご紹介頂きました。また,マインドフルネスの効果についてのシステマテックレビューやメタアナリシスを紹介して頂き,うつ病や気分障害に対するエビデンスがあることを知りました。実践としては,呼吸を使った瞑想と慈悲の瞑想の2つを体験させていただき, 実際にそれぞれの瞑想を体験させて頂くことでよりマインドフルネスへの理解を深めることができました。

講義の後半は,コロナ差別やモラル・インジュリーに対するマインドフルネスの可能性について, 行動免疫という観点を踏まえてご講義をいただきました。行動免疫とは,無意識の嫌悪感情が道徳的嫌悪に発展し,偏見や差別などの排除が生じるというもので, 以前からの潜在的な差別意識を助長するような行動レベルの免疫であると説明して頂きました。これまでに行われてきた人種差別に対するマインドフルネス瞑想の効果などといった実験的研究も紹介して頂き,無意識の偏見に対するマインドフルネス瞑想の効果を学ぶことができました。

さらに、モラル・インジュアリーに対するマインドフルネスの研究について,初期段階であるものの,マインドフルネスが貢献できる領域の1つではないかという重要な提言を頂きました。モラル・インジュアリーは道徳的な傷つきといわれ,ベトナム戦争の帰還兵の自殺念慮に対して抑うつや不安以上に最も影響していた要因であると紹介がありました。現在のコロナ禍は,まさにモラル・インジュアリーが生じやすい危機的な状況ではないかと先生は危惧されていました。

講義の質疑では参加者と積極的なやり取りが行われ,マインドフルネスの応用の仕方については注意が必要な部分もあるとお話しいただきました。マインドフルネスが社会に貢献できる領域についても伝えて頂き,マインドフルネスの可能性を改めて感じることのできる機会となりました。

(文責:関西学院大学大学院文学研究科博士課程前期課程 中野麗羽)